夏の河童橋
夏の河童橋

16番目の国民の祝日「山の日」に第1回全国大会が開かれた夏の上高地を訪ねた。
幸いにも好天に恵まれ、森林の香り「フィトンチッド」を存分に吸いながら、すがすがしい中部山岳国立公園を散策した。
折しも開通したばかりの上高地トンネルを初めて抜けて上高地入りしたが、釜トンネルの大正池寄りがトンネルでふさがれてしまい、上高地へ入る序章ムードが多少さびしくなった感があるものの、5年前の土砂崩落を思えば、安全最優先で上高地入りできることに感謝したい。
観光バスを利用する大勢の外国人観光客を含む日帰り客で、バスターミナルや河童橋付近は混雑していた。
125年前に英国人宣教師ウェストンが登山に訪れて以来、穂高連峰への登山口として、また気軽に梓川の清流と山岳美を楽しめる景勝地として年間120万人もが来訪する。

焼岳と大正池
焼岳と大正池

焼岳を背景に立ち枯れの木が残る大正池の美しい風景を撮影した観光客らは田代湿原から田代池を経る遊歩道を歩き、ウェストンのレリーフ前で記念撮影を楽しみ、梓川沿いに河童橋へと至る。
直射日光が容赦なく降り注ぐ夏休みということもあり、河童橋付近の河原には多くの家族連れが繰り出して梓川の流れに清涼感を満喫する。
河童橋から左岸を徳沢方向へ進むと、わずか全長300㍍ほどの清流・清水川に出る。
一年中、同じ水温を保ち、清流でしか育たないイチョウバイカモが川底に茂り、上高地一の透明度を誇る湧水は地域の飲料水となる。
昔は唯一の上高地への登山路だった徳本峠入り口からさらに進むと昭和初期まで牧場として使われていたハルニレの草原「徳沢」に至り、好天なら前穂高岳の眺望が素晴らしい。

明神の嘉門次小屋
明神の嘉門次小屋

明神橋を渡って右岸に進めば、穂高神社奥宮が管理する明神池がひっそりたたずむ。
43年前に明神池等で撮影された、豊科出身の熊井啓監督作品で関根恵子さん主演映画「朝やけの詩」を知る人は少ないが、自然への畏敬と観光開発による自然破壊への怒りを込めた見事な作品だった。
多くの日帰り客たちが午後3時を過ぎると帰途に就くため、落ち着きを取り戻す夕暮れ時や小鳥たちのさえずりで目覚める早朝の上高地を満喫するにはロッジに1泊すると良い。自然と共生する大切さを再認識する上高地散策となった。
(信毎観光・岩崎象二郎)

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